相続税について、知っているようで、その実、あまり理解できていない方は多いように思います。漠然としたイメージだけでは、いざ手続きなど行う際にトラブルや問題が発生する可能性は高まるでしょう。申告期限の知識も曖昧であってはいけません。特例が受けられないばかりか、ペナルティまで課される恐れもあります。
相続税は、複雑だからこそ基礎はしっかり学んでおきたいものです。
したがって本記事では、基本を中心に解説します。初心者はもちろん、相続税を考えるすべての人たちに参考にしてほしい内容です。
どうぞ、ご一読ください。
目次
- ○ 相続税とは?
- ・相続人の対象
- ・相続税が課される財産額の基準
- ○ 相続税の申告手続き・期限
- ○ 相続税の申告料はなぜ高い?
- ・相続税の申告料が高いわけ
- ・名義貸しとは?
- ・財産の調査
- ○ 相続税に関するトラブル事例
- ・相続税申告・納付の遅延
- ・名義貸し扱いによる相続税の増加
- ○ 相続税に対する基本理解が安心の第一歩!
相続税とは?
相続税とは、亡くなった人(被相続人といいます)の財産を受け継いだときにかかる税金のことです。被相続人の財産を相続又は遺贈(生前に自分の財産を誰に渡すか決めている場合で、遺言書があれば遺贈※贈与の契約書があっての死因贈与を含む。)により取得するときにかかります。
上記のように、相続は財産の引き継ぎです。亡くなった「被相続人」と受け継ぐ「相続人」という図式がそこで生まれます。
相続人の対象
遺言や契約書を交わしていない場合、相続人は、民法にて定められた「法定相続人」が対象となります。ポイントは、相続順位です。
原則、配偶者は相続人となります。加えて、血縁関係にある親族の中から所定の順位によって決まります。
第一に優先されるのは、子ども(すでに死亡しているときは孫)です。
続いて父母(すでに死亡しているときは祖父母)。
その次が兄弟姉妹(すでに死亡しているときは甥・姪)です。
同じ順位であれば、全員が相続人となります。一方で、先の順位の人間が存命の場合、後の順位の人間は対象から外れます。
たとえば、子どもが存命であれば、父母は相続人にはならないということです。
相続税が課される財産額の基準
相続税は必ずしも個別の財産に課せられるものではありません。基準となるのは基礎控除です。その金額は、(固定の)3,000万円に先述した法定相続人一人当たり600万円を加算したものとなります。計算式にすると、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
仮にこの額が相続される財産を上回る場合、相続税の負担は発生しません。課税されるのは、財産から基礎控除を差し引いた金額に対して一定の計算方法により計算された額が相続税額となります。
なお、ここで注意してほしいのが計算上の養子の扱いです(相続順位は実子も養子も変わりません)。法定相続人に含める養子の人数は被相続人に実子がいる場合には1人のみとして数えます。また、被相続人に実子がいない場合、カウントされる養子は2人までです。
相続税の申告手続き・期限
実際に相続税の申告を行うには、細かな手続きが必要です。なおかつ、期限が切られているため、スムーズに済ませられるよう流れを知っておく必要があります。
申告および納付期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。長期の猶予があるように思えますが、実際は慌ただしい日々の連続で、財産関係の整理や精査など着手するまでにも色々と時間を取られることが多いと考えてください。
死亡届の提出から、お通夜、葬儀、49日法要とドタバタ忙しくした後も、相続人と相続財産の確定、被相続人の遺品リストの作成、管理、処分等々やるべきことは山積みです。なかでも、法定相続人全員で財産の分配の話し合いを行う遺産分割協議は思いのほか、もつれることがあります。
そうこうしている間に申告に必要な書類を収集し、作成、提出まで終えなければなりません。申告書や計算書、明細書は、相続税申告書の第1表から第15表まであり、それ以外にも計算書や明細書を沢山作らなければなりません。申告書の厚みが3~5㎝になることもざらです。管轄する税務署へ提出する際には、加えて、納付も忘れないように行いましょう。
相続税の申告は、専門的に詳細を理解してもなお、手続きの複雑さや煩雑さを感じずにはいられないほど手間がかかるものです。昨今、法改正の進行も相まって、より難易度は高くなっている傾向にあります。タイムリーな情報を逐一入手できなければ、どうしたって困難かつ無駄な作業を増やしてしまうでしょう。
そういうわけで、相続に備えるためには、プロの協力やサポート体制は必須だと考えます。
相続税の申告料はなぜ高い?
相続税の申告について、何気なく疑問に思うことは多いものです。本章では、意外と知らない方も多い、税理士の申告料が高い理由について周辺知識とあわせてお伝えします。
相続税の申告料が高いわけ
よく、相続税の申告料は高い、という言葉を見聞きします。確かに、所得税や法人税の申告料に比べればかなり高額です。これについてはきちんとした理由があります。
被相続人の残高証明書等を元に財産を評価し税額を計算するだけならあまり手間はかかりません。
しかし、後述する「財産の調査」をすることにより、「名義貸し」の財産があるのかないのかを調べなければなりません。この作業に相当手間がかかるがゆえに、料金は嵩むことになります。
名義貸しとは?
「名義貸し」とは、被相続人が、生前に配偶者や子供たちの名義を借りて財産を残しているものをいいます。
たとえば、配偶者名義で定期預金をしたり、株式を買ったりすることです。
懸念点として、贈与との違いをどう判断していくかが挙げられます。
今、被相続人が生前に配偶者名義で毎年100万円の定期預金をしていたとしましょう。ここでポイントとなるのは、通帳や印鑑を管理していたのはだれか、贈与を受けた者が処分できる状態であったのかどうかです。そこで、その100万円の扱いを相続財産に追加すべきなのかどうかは決まります。
財産の調査
「財産の調査」という言葉は、私の造語です。相続税に関する言葉で存在するわけではありません。先に述べた「名義貸し」の財産を調べることをいいます。そのためには、銀行や証券会社から過去の取引明細書を取ってもらうことが必要です(当方ではだいたい過去7年分ぐらい)。その中で高額(当方では50万円以上)の取引については、その行方を追跡していきます。ある出金が、同額の定期預金や証券会社の入金であれば簡単に解決する一方で、なかには支払先が不明のものも出てきます。
たとえば以前、とある出金が80万円ほどを数えるも行方知れずのまま宙に浮いていた問題があった際、調査の末、20歳を迎えた娘の成人式用の着物を買ったものだと判明したケースがありました。なお、この場合「名義貸し」には該当しません。こうして調べて出てきた配偶者や子供名義の定期預金や株式等については、贈与に該当するのかそれとも名義貸しの財産対象なのかを判定していかなければなりません。そして、後者と判断されれば、相続財産に加算して財産評価や税額計算が必要です。
相続税に関するトラブル事例
相続税を申告するうえで気になるのが、トラブルや問題の発生です。回避すべくどのように対策を講じるべきか。まずは事例を知ることが大切だと考えます。以下、主なケースをご紹介します。いくつかの起こり得るパターンをあらかじめ念頭に置くことで、リスクヘッジが可能になるでしょう。
相続税申告・納付の遅延
先述した通り、相続税には申告期限があります。仮に忘れてしまった場合、まず「無申告加算課税」という罰金を支払わなければなりません。ちなみに、期限が過ぎたことに気付き自主的に申告した場合は税金総額の5%、他方、税務調査に指摘を受けた後ならば10%が課せられることになります。
加えて、納付の遅延もペナルティの対象です。期限の翌日から納税が完了するまでの日数に応じて計算された延滞税が課されます。
名義貸し扱いによる相続税の増加
名義貸しについては前章で説明した通りです。
被相続人からの贈与か名義預金かで相続税は変わってきます。
それゆえ、名義人は相続人だとしても被相続人の財産として扱われ、想定外に相続税が増えることも頻繁に起き得るものと考えておきましょう。
配偶者が専業主婦の配偶者であるケースや生活が不安定な子どもに対しては、どうしても先を考えて財産を残したいと考えるのが人の情です。財産を移したいのもやむを得ないでしょう。もしくは相続の際の節税対策も視野に入っているかもしれません。しかし、名義人が捻出した形跡がなければ、税務調査にて指摘を受けることがあります。
ですから「名義貸し」の財産も相続財産に加えて計算しなければならないのです。
相続税に対する基本理解が安心の第一歩!
相続税の申告が不慣れな場合、どうしても困難な局面に出くわすことになるでしょう。心労を抱えたまま、必要な手続きや書類作成に取り組むことは非常に負荷のかかるものです。そうした状況下でミスなく処理するのは、たとえ初心者でなくとも容易ではありません。
本記事でお伝えしてきた相続税の基本を理解することは、得体のしれない不安を拭うための第一歩です。当然、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
そうやって最低限の注意事項をおさえたうえで、手厚いサービスの協力を仰ぐことが、何より相続を順調に進めていく手段であり、術だと考える次第です。
なお、当事務所では、お客さまに寄り添った丁寧なサポートで以て、安心を提供いたします。
心配やご不明な点があれば、ぜひご相談ください。