所得税とは文字通り、給与や預金利息といった個人の年間での所得に対してかかる税金を指します。
日常生活において非常に身近な税金です。しかし、その詳細までを理解している方は、大人であってもそう多くないのが実状といえるでしょう。
たとえば、課税の対象となる種類や算出方法、控除、税率……等々、まったく知らない方も少なくありません。
本記事では、所得税の概要・基本、役に立つ情報・知識について、つぶさに言及、解説します。
どうぞ、ご一読ください。
目次
- ○ 所得税について
- ・源泉所得税との違い
- ・住民税との違い
- ・課税の対象となる所得の種類
- ○ 所得税の計算方法
- ・課税所得金額について
- ・所得税率と控除額について
- ・所得税の計算シミュレーション
- ○ 所得税を抑える方法
- ○ 所得税を理解し、メリットにつなげよう!
所得税について
所得税は、先述した通り、個人の年間所得にかかってくる税金です。
1年間のすべての所得から所得控除を差し引いた金額に、一定の税率を適用して算出されます(詳しくは後述します)。
税率は、課税所得金額に応じて高くなる「超過累進税率」を採用。つまり、所得が多ければ、その分、納める税金(税率)も増えるという仕組みです。
所得税周辺の話に及ぶと、源泉所得税や住民税と混同される方が時々見受けられます。しかし、実際のところ、その違いは明白です。
また、課税の対象となる所得は10種類あることも覚えておいて損はないでしょう。各所得タイプで、収入や必要経費の範囲、あるいは計算方法などが定められている点もおさえておくべき基礎知識といえます。
源泉所得税との違い
事業者が、従業員の給料を支払う際にあらかじめ所得税を預かったうえで天引きし、納付することを源泉徴収といいます。この徴収した所得税、すなわち会社が個人の代わりに納めたお金こそ源泉所得税です。
一般的に源泉徴収の税額は、本来納める額と一致しません。そのため、正確な数字を算出し、還付や(再)徴収といった調整を12月に行います。それが、毎月の給料に対する過不足金額を年末にまとめて精算する手続き、そう、年末調整です。
サラリーマンの場合、上述した源泉徴収制度が該当します。確認すればわかることですが、毎月の給与明細書内で所得税が差し引かれているはずです。
住民税との違い
所得税同様、住民税も、毎月の給料から天引きされます。
他方、異なる点は、住民税が都道府県や市区町村といった地方自治体へ納める地方税であるということです。所得税は、国に納めます。つまり、国税です。
また、住民税は、自治体から税額などが通知される「賦課課税方式」を採用しています。
ちなみに所得税の場合、手続きは原則、税務署へ自ら申告し税額が決まる「申告納税方式」です。
課税対象期間も異なります。
所得税がその年の1月から12月までであるのに対して、住民税は前年の1月から12月までの所得が対象です。
さらには、税率。
住民税は、「所得割」と、所得とは関係のない「均等割」に分かれています。前者は 原則として一律10%です。
一方で、所得税には「均等割」がありません。加えて、すでにお伝えしていますが、「超過累進税率」を採用しているため、所得に応じて税率が変わってきます。つまり、所得税の負担割合は、一律でないということです。
住民税と所得税。そのほか控除額でも差異が生じるなど、両者はさまざまな面で違いがあります。
課税の対象となる所得の種類
課税所得には、区分が設けられています。先にお伝えした通り、全部で10種類です。
以下、ご紹介します(順番はランダムです)。
まずは、「利子所得」。
主には、預貯金や国内外の国債、地方債、社債といった公社債で得た利子などです。公社債投資信託による分配金で発生する所得も含まれます。
2つ目は、「配当所得」。
株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当、基金利息、投資法人からの金銭の分配、上述した投資信託の収益の分配などで発生した所得を指します。
3つ目は、「不動産所得」。
主に不動産賃貸での所得を指します。なお、船舶または航空機の貸付けによる所得もこの区分です。
4つ目は、「事業所得」。
農業や漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業……等々、自営業での所得に該当します。
5つ目は、「給与所得」。
パート、アルバイトも含め、会社で働く方が勤務先から受け取る給料のことです。
6つ目は、「退職所得」。
退職したときに受け取る所得です。つまりは退職金などを指します。
7つ目は、「一時所得」。
懸賞や福引、競馬や競輪などでの払戻金、生命保険解約の際の一時金などが該当します。
8つ目は、「雑所得」。
副業での所得が当てはまります。そのほか、公的年金、印税、講演料、FX、仮想通貨……等々もこの区分です。
9つ目は、「山林所得」。
所有する山林を伐採し売却する場合や、立木のまま譲渡する際に受け取る所得のことです。
そして、最後に挙げるのが「譲渡所得」。
土地、建物、株式、ゴルフ会員権といった資産を、売却することで発生した所得を指します。
以上です。
これらは、当然、所得税の計算に関わってきます。各区分で必要経費の範囲なども異なるため、自身の所得がどのタイプに当てはまるのか、あらかじめ把握しておくようにしましょう。
所得税の計算方法
下記、所得税の計算式です。
所得税額=課税所得金額×所得税率-控除額
すなわち、課税所得金額、所得税率、控除額について知ることが必要です。
まずは、それぞれを確認しましょう。
課税所得金額について
源泉徴収される前の収入金額(交通費などの非課税額を除いた勤務先で支払われる給料)から規定の給与所得控除額を差し引き、さらに各種所得控除額(基礎控除や社会保険料控除、配偶者控除など)を控除した数値が課税所得金額です。
所得税率と控除額について
課税所得金額によって所得税率と控除額は決められています。
それぞれ、国税庁が発表している所得税の速算表で確認するようにしましょう。
以下、令和2年4月の法令に基づいた、平成27年分以降の課税所得金額に対する所得税率と控除額を抜粋します。
1,000円 から 1,949,000円までは税率5%、控除額0円です。
1,950,000円 から 3,299,000円までは税率10%、控除額97,500円です。
3,300,000円 から 6,949,000円までは税率20%、控除額427,500円です。
6,950,000円 から 8,999,000円までは税率23%、控除額636,000円です。
9,000,000円 から 17,999,000円までは税率33%、控除額1,536,000円です。
18,000,000円 から 39,999,000円までは税率40%、控除額2,796,000円です。
40,000,000円 以上は税率45%、控除額4,796,000円です。
※なお、平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)の合計が納税額です。
所得税の計算シミュレーション
それでは、いくつか例を挙げて所得税を計算しましょう。
課税所得金額が3,000,000円の場合。
3,000,000円×10%-97,500円=202,500円
課税所得金額が5,000,000円の場合。
5,000,000円×20%-427,500円=572,500円
課税所得金額が10,000,000円の場合。
10,000,000円×33%-1,536,000円=1,764,000円
課税所得金額が20,000,000円の場合。
20,000,000円×40%-2,796,000円=5,204,000円
課税所得金額が50,000,000円の場合。
50,000,000円×45%-4,796,000円=17,704,000円
所得税を抑える方法
よくある相談として多いのが、節税方法です。
結論から述べると、所得税は、課税所得金額を少なくすることで抑えられます。
改善の余地があるとすれば、チェックすべきは、まず経費申請の漏れです。
たとえば、事業のために使うものを購入したときの費用、セミナーへの参加費などは経費になり得ます。必要経費として計上することで、課税所得金額を減らすことができます。
事業のために支出した金銭に抜けがないかどうかの確認は、領収書をこまめに取っておくなど、普段から意識して行いましょう。
控除についても同様です。漏れなく利用することで課税所得税金額を少なくできます。所得控除、税額控除、申告していないものがないかどうか、くまなく探しましょう。なかには、控除扱いではないと勝手に思い込んでいた支出もあるかもしれません。
たとえば、ふるさと納税も税額控除に含まれる寄附金控除の一つです。また、一定額以上の医療費を支払ったときには、医療費控除が使えます。
そして開業された方には、青色申告の利用がおすすめです。適切な手続きによって経費として計上できる項目が増えます。加えて、受けられる特別控除が10万円又は65万円です。
以上のことから、高い節税効果が期待できます。
所得税を理解し、メリットにつなげよう!
所得の種類や控除、算出方法といった所得税に関する知識をおさえておくことで、節税などのメリットにつながる可能性があります。
確かに、複雑な計算や手続きなど、特に慣れないうちだと難しく、プロの協力を仰ぐ必要が出てくるかもしれません。とはいえ、仕組みをある程度理解しているだけでもアドバンテージがあると思ってください。相談の際、それは如実にわかるはずです。おそらく、スムーズに事を運びやすいでしょう。
なお、当事務所では、お客さまに寄り添った丁寧なサポートで以て、安心を提供いたします。
心配やご不明な点があれば、ぜひご相談ください。